

2023年シーズンのストーリーがまもなく始まる。我らがレノファ山口FCを率いる名塚善寛監督は「攻守においてアグレッシブに、自分たちから仕掛けて行くサッカーを見せたい」と誓う。その準備はもちろん万端。高みに向かって共鳴するイレブンが、キックオフから熱い試合を繰り広げてくれるはずだ。
今年はJ1昇格の門戸が例年よりは開き、1位と2位が自動昇格、3位から6位はプレーオフで2戦2勝すれば昇格が叶う。レノファはまだ最終成績で6位以内に届いたことはないが、Jリーグ参入9年目、J2リーグでは8年目となる2023年シーズンは十分に挑む資格がある。鹿児島キャンプで3試合、開幕1週間前にも1試合のトレーニングマッチを組み、Jリーグチームと対戦して自信を深めてきた。開幕直前までの手応えも上々だ。
完成度が高まっている中で迎える開幕戦は大宮アルディージャと対戦する。一番の関心事は名塚監督がセレクトするスターティングメンバーだろう。
レノファは今年、いわゆる即戦力を中心に補強を重ね、移籍した選手の穴を埋めるのではなく、戦いに必要な武器を新たに追加した。古巣対戦の矢島慎也と沼田圭悟は秀でたテクニックを持ち、皆川佑介は得点力強化に期待が懸かる。松本大輔は対人守備に強く、失点減に向けて頼りになる存在だ。若手新戦力だが五十嵐太陽、野寄和哉なども好アピールを続ける。既存選手間の競争も激しく、誰が先発に選ばれても不思議はない。
今日の昼過ぎにスタメンが発表されたあとは、選手たちがどのポジションでプレーするかに興味は移る。フォーメーションは図の通り、守備が4人、中盤が3人、前線が3人の4-3-3を想定しているが、名塚監督があっと驚くような采配を見せるかもしれない。皆川は頂点、生駒仁は守備陣の中央でプレーすると容易に想像できるが、複数のポジションで活躍できる選手も多く、サッカー好きを唸らせる起用もあるに違いない。
後段で触れるが大宮は4-4-2のフォーメーションが予想される。オーソドックスな形である分、レノファがゴールに迫るにはブロックの内側で果敢にボールを動かす必要があり、かなりタフなゲームとなりそうだ。
もちろんプレスに引っ掛かったり、外側で回していてもチャンスは引き寄せられない。危険なゾーンに挑んでこそ価値があり、特に前線で起点になれる皆川、中盤が主戦場の池上丈二や山瀬功治、五十嵐太陽などは相手より先にスペースに動いていきたい。相手の作る4-4-2の箱の内側でレノファの選手たちが躍動するほど、得点のチャンスは確実に増えていく!
いよいよ維新みらいふスタジアムが熱狂に包まれる新しいシーズンが始まる。変わらぬフィロソフィーの中に、進化の息吹を感じ取れる90分間だ。こころひとつ、共鳴する仲間たちと熱い戦いへと挑んでいこう。

開幕戦がいきなりの古巣対戦となった矢島慎也。ボールコントロールに長けた新たな“6番”は、「ボールを保持するスタイルの中で、自分の良さも生かせると思う」と熱を込め、テクニックと頭脳でレノファスタイルの進化を誓う。
矢島はファジアーノ岡山に所属していた2016年、レノファと対戦した開幕戦でゴールを挙げた。くしくもレノファにとってはJ2昇格後初の公式戦で、「J2は甘くない」と印象付けられた試合だったが、同年は矢島自身にも深く記憶に残るシーズンとなり、ボランチで定位置を確保し、ゲームメーカーとしてチームをプレーオフまで引き上げている。
攻撃センスがあり、相手ゴールに近いエリアで決定的な仕事をしたり、サイドから仕掛けたりと華のあるプレーに目が行くが、真骨頂は持ち前のサッカーIQを生かした中盤からのマネジメント。味方の特徴に合わせて機敏にボールの質を変え、パスを出したあとも最善のポジショニングを心掛ける。
「中央にいる選手は状況によって一番良いポジションを取る賢さがいる。試合の流れによってはボールの落ち着きどころになったりして、チームのために戦いたい」
その言葉が示すように明晰な頭脳の持ち主だ。ゲームの核となる選手が付けてきた“6番”を受け継いだのも頷ける、華麗にして堅実な矢島のフットボールスタイル。古巣と対戦する開幕戦から持てる力を発揮し、初戦勝利への原動力となってみせる。


大宮のフォーメーションは4-4-2と予想した。相馬直樹監督体制が継続し、戦い方は昨シーズンの後半をベースに、よりブラッシュアップしたものとなっているだろう。強度の高いプレッシングを仕掛け、ボールを奪えばそれほど手数を掛けず、速攻でシュートまで至る。昨秋の前回対戦で2得点を挙げた中野誠也を始め、河田篤秀、富山貴光など経験豊富なフィニッシャーはハイレベルだ。
守備陣の顔ぶれも整理されてきており、ひとたびブロックを作ればかなり堅牢なものとなる。センターバックはJ1経験もあるレフティーの袴田裕太郎、昨季はヴァンフォーレ甲府で守備を束ねた浦上仁騎などが予想され、レノファの皆川佑介などと対峙する。大宮にとっては堅守と速攻をほつれなく完遂させることが、勝負の分かれ目となりそうだ。

2年ぶりに大宮アルディージャのユニフォームに袖を通した石川俊輝。昨シーズンはヴァンフォーレ甲府に期限付き移籍し、主力選手の一人として活躍したほか、天皇杯での快進撃の立役者となった。
天皇杯ラウンド16ではキャプテンマークを巻いてチームを束ね、サガン鳥栖に3-1で勝利。サンフレッチェ広島と対戦した決勝戦ではフル出場して拮抗したゲームを展開。1-1で迎えたPK戦では相手が外したあとの4人目を任され、落ち着いて左隅を突いた。
感動の戴冠という経験を引っ提げて大宮に復帰。開幕戦も本職のボランチでプレーすることになりそうだ。
大宮はスピーディーなサッカーをしているとはいえ、決して中盤を省略した蹴り合いはしない。ボランチがボールを振り分けて両サイドのストロングを生かしたり、時間を作ったりする。それも石川のタスクではあるが、守備面でも惜しまずにハードワークでき、対人ディフェンスに強いのも特徴の一つ。ボールを奪えるボランチは大宮の戦術遂行には不可欠なピースだ。
チームがどのようなサッカーを志していても、ボールを自分たちのものにしなければ得点は取れない。とりわけ現代のボランチはボールを奪いきる守備と素早い切り替えが必須要素で、開幕戦も試合を左右するファクターになる。その重要な役目を相手以上にやりきれるか――。
大宮の石川俊輝、対面する矢島慎也のパフォーマンスは、勝敗のバロメーターとなる。
