


セービング陸上競技場(下関市営下関陸上競技場)で行われる今節のホームゲームは21位のツエーゲン金沢と対戦する。勝点3を積み上げられれば『J2残留』にぐっと近づくだけに、下関でもスタジアムが一体となった応援で白星へと突き進みたい。
今シーズンのレノファ山口FCはトップ6(6位以内)という目標に向かって歩みを進めてきたが、思うようには勝利を積み上げられず、現実的には残留争いの渦中にある。
しかし指揮官のフアン・エスナイデル監督は攻撃的なサッカーを貫く姿勢を変えておらず、下関でも攻守両面で前向きに戦う姿勢は継続する。野心に満ちたサッカーをぜひとも楽しんでほしい。
特に注目してほしいのがドリブルで仕掛ける選手たちの迫力だ。
下関市のご当地シャレン選手でもある26.野寄和哉は大卒ルーキーながら今季はすでに18試合に出場、小柄な身体をストロングポイントに変え、サイドをドリブルで切り崩している。前節のザスパクサツ群馬戦では24.梅木翼の決勝点につながるシュートを放つなど、ゴールも貪欲に狙う。

11.田中稔也も縦に仕掛けて行く動きに魅力があり、16.吉岡雅和は運動量豊富に攻守にハードワークしている。相手の金沢はボールを持っている選手に厳しいディフェンスをしてくるが、それをかわしてボールを運んでいく選手たちのテクニックは、スタジアムを大いに盛り上げてくれるだろう。

守備陣の奮闘も勝点奪取に向けては大きなポイントになる。ディフェンスラインは守備強度が高い66.キム・ボムヨン、厳しい守備と左足からの高精度のキックを持つ3.ヘナン、冴えた頭脳で守備を統率する15.前貴之の構成が予想され、さらに正確な予測からファインセーブを連発する21.関憲太郎がゴールを死守する。
金沢は長いボールを蹴ってくることが考えられるため、ディフェンスラインが相手FWと競り合ってボールを跳ね返し、そこで生じるセカンドボールを8.佐藤謙介と27.成岡輝瑠が拾って相手の攻撃を終わらせることが守備の基本になってくる。
ここでの連係が崩れると相手にボールを動かされてしまうが、キムは韓国出身、ヘナンはブラジル出身ながら日本でのプレー経験が豊富でコミュニケーションに不安はない。味方同士でしっかりと言葉を交わして相手に使われるスペースを狭め、無失点で試合を進められるようにしたい。

試合自体はレノファがボールを持ってゲームを優位に進める状況が続くと考えられる。
前回対戦は相手のカウンターに苦しんで2-5という結果に終わったが、レノファのボール支配率はスコアとは裏腹に64パーセントに達している。今節もボールを持つのはレノファになるだろう。
その上で前回対戦よりもレノファはゴールに向く矢印が太くなり、相手のカウンターに対する守備でも佐藤や前のリスク管理で安定感を増している。試合序盤から自信を持ってボールを保持し、相手の隙を突いてアタッカー陣が果敢にゴールに挑めれば、勝機は引き寄せられそうだ。別項で述べる27.成岡輝瑠など後方の選手たちのシュート意識も高まっており、下関の地でのゴールラッシュに期待が懸かる。
まもなく始まる今シーズン唯一の下関でのホーム戦。
関門海峡の潮流を思わせる鮮やかなカラーリングのスタンド席やタータントラックに包まれたピッチで、オレンジの戦士たちが勝利を目指して激闘を繰り広げる。
いよいよ「下関熱狂」と銘打たれた熱い90分間の開演だ。下関でもピッチとスタンドが一体となって歓喜の勝点3に挑んでいこう!

「これからの試合は惜しいだけでは足りない。ゲーム内容が良くなくても勝てば正解になる。
そこを履き違えないようにしたい」
27.成岡輝瑠はきっぱりと言い切る。残留争いに巻き込まれている以上、勝点を積み上げていくことが何にも勝る「正解」。充実した内容を作りながらも結果を引き寄せられなかったレノファにとって、21歳が示す結果への強いこだわりは頼もしい。
静岡県出身で清水エスパルスの育成組織からトップチームに昇格した。
ただ選手層の厚いチームでは若手の出場機会は限られ、2021年にSC相模原、昨年はレノファに期限付きで移籍。昨年のレノファではJリーグ初ゴールを含む3得点を挙げていた。

残念ながら今年も清水の序列1番手にはなれなかったが、ボールを扱うテクニック、深い洞察力をうかがわせるプレーは健在だった。
言うまでもなくレノファのチームスタイルや求める選手像も技術と頭脳は不可分。成岡は今年8月、成長できる場として己のプレースタイルに合致するレノファオレンジに再び袖を通した。
今年のチームにもすぐに溶け込み、8月26日のヴァンフォーレ甲府戦で再デビュー。直近2試合は8.佐藤謙介と組んでボランチの位置でプレーしている。佐藤との関係性は良く、佐藤が下がり気味にバランスを見ている分、成岡は前線に絡む機会が増えてきている。
前節のザスパクサツ群馬戦では4本のシュートを放った。しかしゴールは0。
昨年は攻撃への積極参加から得点を奪取しているだけに、記者から前節の内容を問われた成岡は「打つチャンスもあったし、決めるチャンスもあった」と内省し、的の真ん中を射た成岡節とでも言うべき表現でこう続けた。

「チャンスでシュートを決め切ることだったり、アシストだったりをすることは課題。チャンスがあるだけではゴールは動かないのでね…。ゴールに対しての入り方もそうだが、とにかく出ていかないことには何も始まらない」
積み上げも必要だが、今は新たな挑戦をするよりも持てるものを解き放って動かぬゴールを動かしたい――。
そんな成岡の思いがにじむ。プレーの選択でもゴールに直結するものが目立ち、左右にボールを振ってサッカーを広げることもあるが、道が見えれば躊躇(ちゅうちょ)なく縦パスを通している。
守備面では佐藤と同様にバランスを見ながらスペースを埋めたり、セカンドボールを回収したりして無失点に貢献する。とりわけ成岡がずるずると下がらず、前向きに守備をしているのがハイライン・ハイプレスの継続につながっており、成岡自身も「失点をしなければ負けない。チーム全体として高い位置で奪う回数は増えてきていて、それが失点0で抑えられている要因になっている」と話す。
今節はプレスが効きにくい相手と対峙するが、3試合連続でのクリーンシート(無失点)達成に向けては間断のないハイプレスとセカンドボールへの素早い反応が求められる。やはり成岡の積極性が勝利への大きなファクターとなりそうだ。
「下関は僕としては初めてのスタジアム。練習から試合に出られるように競争を続けていければ、試合で良いプレーができる。良い競争をしていきたい」

そう誓うように試合は競争を勝ち抜いた者のみが出られる最高の舞台だ。
責任も重くのしかかるが、「正解」を追う彼のプレーは一つ一つが己のためのみならず、チームの未来につながっている。今にこだわり、将来に橋を架ける慧眼(けいがん)の21歳。下関の地で動かぬゴールを射抜き、スコアを動かしてみせる。


2023年9月26日現在
ツエーゲン金沢は悪天候で中断した第31節ザスパクサツ群馬戦の再開試合が9月27日に組まれ、約60分間というショートゲームをプレー。そこから中3日で今節を迎え、レノファとの対戦でイレギュラーな3連戦を締めくくる。
柳下正明監督が7年目の指揮を執っており、4-4-2のフォーメーションを基本に戦っている。
プレースタイルは堅守速攻。マンツーマンディフェンスを主軸に据える守備では、マーカーをあまりスイッチせず、ボールホルダーに対して一人の選手が粘り強くチェースし続ける。ボールを奪うと素早くカウンターに転じ、前線のターゲットを生かしてシュートシーンを創出する。
前線は2トップが横並びになる場合もあるが、状況によってはベテランの豊田陽平(背番号19)を頂点に置いてロングボールの明瞭なターゲットにすることもある。豊田だけでなくFW陣は誰が出てもフィジカル的に強力。向かい合うレノファのセンターバックとボランチは相手の立ち位置を早い時点で見極めて、エラーなく対応できるように心掛けたい。
もっとも右サイドバックの小島雅也(背番号25)が累積警告で出場停止となっていたり、タフな3連戦となっていたりすることを踏まえれば、金沢が早めに交代カードを切ってくる可能性がある。
戦い方の変化も考えられ、レノファはピッチ内外で相手の出方を敏感に感じ取って試合を進めることも重要になりそうだ。

今季途中でモンテディオ山形からツエーゲン金沢に加入した加藤大樹(背番号20)は要注目の選手だ。
加藤は2016年にJFLのSP京都FC(旧佐川印刷京都)からレノファに移籍し、16と17年にレノファで活躍。18年に金沢に移籍したのち、20年からは山形でプレーしていたが、今夏、再び金沢に加入した。
左サイドハーフを担うレフティーで、ボールの有無を問わず俊敏に駆け上がってチャンスシーンを作り出す。カウンターを得意とする金沢はロングボールをFWに当てる機会が多いものの、軽快にピッチを駆ける加藤はセカンドチャンスを創出する上でも欠かせないピース。
ミッドウィークの群馬戦では加藤が敵陣中央からサイドにボールを振ったことがきっかけとなり、待望の先制点につながった。
マッチアップするのは16.吉岡雅和と15.前貴之だ。
特にハードワーカーの吉岡とは走力とインテンシティーで激しくやり合うことが予想され、見応えのあるバトルが繰り広げられそうだ。
また、金沢には19年にレノファに所属した小野原和哉(背番号19)もボランチやサイドバックでプレーしている。小野原も守備強度が高い選手だが、2022年にレノファ戦でロングシュートをしずめておりプレーの幅は広い。試合を通じてレノファがボールを保持し続けることが理想とはいえ、守備に切り替わった時も金沢の特徴のある選手たちに自由に動かれないよう集中力高く守り抜きたい。
