

前節はV・ファーレン長崎に1-0で勝利したレノファ山口FC。
5試合連続のクリーンシート(無失点)はクラブ記録を更新するもので、守備への手応えも深めている。順位は16位としており、下位での争いから抜け出し、上位進出への足掛かりも築きつつある。

長崎戦は「前半はかなりパーフェクトな試合だった」とフアン・エスナイデル監督が話すように、前半は良い守備から良い攻撃が機能してゲームを支配した。後半は疲労から守備ブロックに軸足を置いたとはいえ、無失点で耐え抜いた。
守備が安定しているレノファにとって、今求められるものは追加点だ。いわきFC戦もレノファが安易に失点するようなことはなさそうだが、相手の勢いを踏まえれば、ゴールが1点では勝点3を得られるとは限らない。やはり2点目、3点目を狙いたい。
どのような形がゴールに直結するだろうか。相手のフォーメーションは4-1-4-1が濃厚。守備ではボランチの脇にインサイドハーフの選手が下がることはあっても、大きく形が崩れることはなく、堅固でコンパクトな布陣を維持している。
攻撃に出るレノファにとって、守備が整う前にカウンターを完結できれば最高だが、速攻ができないときも停滞しない攻撃が重要になる。キーワードを挙げれば「アクション」。13.大槻周平は次のように話し、アクションを起こす必要性を説いた。

「攻撃に関しては自由にやって良いという感じで言われているが、もっと距離感は良くしたい。距離感が良いとコンビネーションの良さも出せる。どんどん出して動くとか、もっとアクションを起こしていけるようにしたい。アクションを出せればもっと良い攻撃はできる」
アクションはどのようなものでも良い。
前節の20.河野孝汰のゴールシーンでは、コーナーキックの流れから15.前貴之がシュートを放ち、ゴール前の河野に渡った。そのシーンを河野は「タカくんのシュートだったと思うけれど、自分も半身の状態を作ってこぼれ球に行こうと考えていた」と振り返る。ここでは果敢にシュートを狙うというアクションの連続がゴールを生んだとも言えよう。

フォーメーションの噛み合わせ上は、相手の帰陣が遅れればボランチ周辺はオープンスペースになりやすい。そこはレノファが使えるゾーンであり、使いたいゾーンでもある。6.矢島慎也、32.五十嵐太陽など前線の連動でその空間をレノファのエリアに変えられれば、より多彩なアクションを起こせそう。大槻が言うコンビネーションや相手4バックの背後を突く動きも活発に見せていきたい。
セットプレーも得点源になり得る。コーナーキック時にいわきはゾーンディフェンスを敷いており、キッカーの精度と飛び込む選手のタイミングがぴたりと合う必要もあるが、そういう場面こそ6.矢島慎也と14.沼田圭悟の出番。矢島は前節試合後も「チームが用意してきているものは自信を持ってやってほしいと監督からも言われている」と話しており、キッカーの矢島、ヘディングシュートを何度も放っている沼田の息のあったシュートシーンにも期待大だ。

今日の試合は勝てば順位がさらにジャンプアップする可能性がある。勝点差の近いいわきとの攻防を制し、順位表の上の方へ!
ボールを持てばアクションを起こし、守っても強度高く挑み、優位に試合を進めていこう。目指せホーム戦での3連勝。みらスタでみんなの力で勝利を掴み取ろう!

「自分で自分の限界を決めていた」
2.高橋秀典はそう振り返る。相手に強くアプローチできる守備のスペシャリストには違いないが、第22節栃木SC戦の途中からウイングに起用されると、翌節からの2試合は同ポジションでスタメンに起用された。
試合前に発表される公式メンバー表には名前の横に「FW」の表記。高橋は「自分でもちょっと笑ってしまった。すごく違和感はあった」と苦笑いを浮かべたが、ライン際の突破からクロスを上げたり、24節山形戦の後半には右ポストを叩くヘディングシュートを放ったりと、本職に匹敵するほど『FW』としての活躍を見せた。
ライン際でのムーブメントに関して、高橋は「大学の時にそういう練習をしていたのでその成果が出ているのかも」と話す。その言葉からも見えてくるように、直近数試合、高橋は自分の中にある辞書から最善のプレーを探し出し、自信を持って表現している。新しいものを得たというよりは、仕舞われていたポテンシャルを表に出すことができた数週間だったのかもしれない。

「自分では攻撃はあまり得意ではないと思っていた。でも、監督からできるから自信を持ってやれと言ってもらった。今振り返ってみれば、自分で自分の限界を決めていた。監督が自信を持ってやって大丈夫だと言ってくれた。ウイングをやって攻撃の意識がもっと増えて、多くの選択肢を持てるようになった」
前節は久しぶりにサイドバックで出場。前半から継続して攻撃に参加し、クロスボールを送ったり、サイドを横断するボールでシュートチャンスを作ったりした。難敵に対してサイドバックでも攻撃の意識は光った。
守備での頼もしさはもちろん抜群。「相手サイドバックが高い位置を取れば(16.吉岡雅和に)下がってもらおうと思っていた。結果的に相手はあまり出て来なかったので、僕がサイドハーフ(澤田崇)を見ることができた。来たら下げるというコミュニケーションはしっかり取れていた」と言い、ウイングに入った吉岡との連係や、高橋本来の対人強度で強みを発揮した。
ウイングで出た試合も、サイドバックで出た試合も無失点。二つのポジションを経験したことで、ウイングが必要とする声、サイドバックが取りたい立ち位置がプレーに反映され、守備のクオリティーは一層向上している。特に前節の長崎戦は自信を深めるものとなった。
「前半はゴールに向かう回数が多かった。後半は長崎さんにボールを持たれる時間は長くなったが、決定的なチャンスは作らせなかった。そういうことが個人的にはすごく大事だと思う。常に僕らがボールを握れるわけではない。そういう時にどういうゲームをするかがすごく大事。最後をやらせないという部分がよくできた」
次のいわき戦も相手の強度は高く、攻守両面で高橋はキーマンになりそうだ。ただ、高橋は「戦っているのは一人ではなくてチーム」と言い、こう続ける。

「行く場面は行かないといけないし、行ったら本当にボールを取り切ることが大切。中途半端にならないようにしたい。5試合連続無失点ということはあるが、いつかは失点する時も来る。そういう時に下を向かないこともそうだが、無失点を続けるという意識を持ち続ければ、また失点は減らせると思う。全員で良い準備をしていきたい」
“限界”という重しを取り払い、未来を開こうとする高橋秀典。守備もできれば攻撃もできる2番がチームの先頭に立ち、今日も白星へとひた走ってゆく。



2023年7月11日現在
いわきFCは現在、2連勝中で調子を上げてきている。田村雄三監督が指揮を執るようになった直近5試合は負けがなく、J3降格圏を脱している。
田村監督がいわきの監督に就くのは2年ぶり。
最初に就任したのは2017年で、当時県リーグ1部だったチームを東北2部、同1部、JFLと毎年優勝で昇格させ、さらに2021年のJFLを制覇してJリーグに導いた。今年もGMを務めていただけに、チームの強みをしっかり表現できていると言えそうだ。
フォーメーションは4-1-4-1と予想した。ただ今節は特別指定選手ながら背番号9を付けている近藤慶一が累積警告のため出場停止。センターFWには今季4試合に先発している吉澤柊(背番号18)が入るとみられる。
もともとフィジカルの強さが特徴的だったいわきは、縦のシンプルな攻撃からチャンスを作ることも多い。
しかしそれだけではなく、敵陣で時間を作れると後ろから多くの選手が攻撃参加し、人数の厚みを出している。この厚みでセカンドボールを回収し、ミドルシュートも積極的に狙っている。
フィニッシャーの近藤が出場停止となっているが、昨季のJ3リーグ得点王に有田稜(背番号11)はサイドを開いてボールを受けたり、ドリブルでカットインしたりと多彩な攻撃を見せる。図にはないが、いわきで4年目を迎えた岩渕弘人(背番号19)は4試合前の大宮アルディージャ戦で途中出場し、相手のミスを突いてJ2リーグでの初ゴールを奪取。その後の試合も途中出場から立て続けにゴールを決め、4試合5得点を挙げている。
レノファとしてはまずはフリーになる選手を生まないようにすることと、セカンドボールへの反応を早めることに集中したい。ただ試合途中からテンポアップできるのもいわきの特徴であり、レノファは終盤も対人守備の厳しさを継続するか、前節長崎戦の後半のように割り切ってブロックを築くか、ピッチ内の意思統一も重要になりそうだ。

下田栄祐(背番号33)は鹿島アントラーズのユース出身で、2022年9月にトップチームへの昇格が内定。同年12月にいわきFCへの育成型期限付き移籍が発表された。持ち場はボランチで、鹿島はニュースリリースでボール奪取力、守備予測に優れ、強烈なミドルシュートを持っているとつづっている。
6月11日のモンテディオ山形戦でJリーグ戦にデビュー。その試合こそ落としたが、翌節以降は安定したゲームメーキングを見せている。ボール奪取の良さに加え、下田がピッチ中央での落ち着きどころになることで、ビルドアップの質がかなり上がっていると言えそうだ。
運動量も多く、有田稜(背番号11)と連係して攻撃参加したり、逆にサイドバックやセンターバックが上がった場合のカバーリングをしたりとタフに動いている。
レノファはゲームを作る下田へのプレスは試合を通して効かせたい。彼に多くの選択肢を与えてしまうのはリスクが高く、確実なアプローチが必要だ。
また試合展開によっては、レノファの33番とのマッチアップもありそうだ。
4試合連続でピッチに立っている41歳の33.山瀬功治と、5月に19歳になったばかりの下田栄祐。
年齢差22歳の両氏が見せる強度の高いマッチアップは、この試合をさらに魅力的なものにしてくれるだろう。
