VOL.9「全てはゴールのために。」
♯29 FW 兒玉 光史 MITSUFUMI KODAMA
2009年シーズンMDP(10/4号)に掲載された記事です。
何かを起こしてくれる気がする。レノファ山口の#29はそんな期待を持たせてくれる数少ない選手の1人である。
加入した2008年シーズン。スーパーサブのごとく試合途中から投入されるとピッチを縦横無尽に駆け回り、ゴール前では決定的な仕事をやってのける。
昨年の中国リーグで積み重ねたゴールは「6」、よって今季の「2」という数字にはいささか物足りなさを覚えるかもしれない。しかし、彼がもたらすチームへの効果はその数字以上の価値があることは誰もが知っている事実だ。
交代を待つ#29兒玉光史がタッチライン際に姿を現すとスタンドのどこからともなく歓声が漏れる。そして投入されると膠着していた試合とスタンドは期待感で溢れ、やがて喝采に包まれる。前線で激しいチェックをしたかと思うと、攻撃時にはゴール前に現れ、足でも頭でも貪欲にゴールを狙う。
「とにかく点が欲しい。点を取った時の興奮がたまらないんですよ(笑)試合中も点取った時の瞬間を常に頭に描いています。」
前線からのチェックもボールを奪うためではなくゴールを奪うため。ゴールが何よりの喜びである彼にとって今年の成績が「物足りない」のも無理はないのかもしれない。
「ボールが欲しい所を空けておくんです。僕なりの『聖域』ってやつですか(笑)そこに飛び込んで、ゴールが見えたらとにかくシュート。今の成績は全く満足出来るものではないしもっと点を取りたいです。」
宮崎県出身の兒玉は大学入学をきっかけに山口へ来た。高校時代、大学時代と大きな舞台での活躍は無い。ただ「サッカーで飯を食う」という確かな強い意志と覚悟を拠り所にレノファの門を叩いた。
「大学生の時にレノファが出来て、とにかく全力でやること、それだけを考えて入団して…サッカーが出来る場所があってありがたいです。だから山口のためにもチームのためにも、『がむしゃら』にやるしかないなと思っています。」
チームの中ではムードメーカーのような存在。「ミツ」の愛称でチームメイトやサポーターから愛され、本人曰く「普段はいつもふざけてます(笑)」同郷の#39戸高とは私生活でも仲が良く行動を共にすることも多い。
「宮崎の話はよくします。研太さんは宮崎のなまりが全然出ないんですよ、僕はこの通りで(笑)やっぱり見習うことも多いですね、サッカーに対する姿勢なんかは特に。僕その背中を黙って見て学ばせてもらってます。」
『実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな』―謙虚に学び続けるという意味のこの言葉を兒玉は座右の銘として、いつも自身に言い聞かせている。入団以降、試合の途中から出場するなり、幾多の場面でチームを救ってきた彼ではあるが自身の課題を明確に見据え、謙虚に学ぶ姿勢は忘れない。
「僕はFWですからやっぱり試合の最初から出て点を取りたいです。でも最初から出られないのは実力が無いから。自分ではスーパーサブではなくてただのサブだと思っています。むしろそうやって呼んでもらえるなんて有難いですよね。90分走り抜く、戦い抜く体力、そしてゴール前の積極性。まだまだ学んで身につけることは多いけど、成長して期待に応えるプレーをしたいです。だからこれからはもっと貪欲に強引に、一直線にゴールに向かって行きます。チームも『粘り勝つ』ことが出来ているしさらに上のカテゴリーに行くために。」
普段はサッカーの話を自ら真剣にすることはほとんど無く、仲間の熱い話に耳を傾けるだけという。
「なんか照れくさいですね(笑)」
苦笑いしながらも少し照れた表情からは、プレーヤーとしての成長、そしてスーパーサブ返上の誓いが読み取れる。
最後に兒玉が6年過ごしている第2の故郷・山口について語ってくれた。
「山口は本当に好きです。すごく住みすいし愛着はかなりありますね。たまにボーっとしている時に考えるんです。ここにいるの不思議だなって。だからこの出会いを大切にしたいし山口の人達や声援をくれるサポーターの方々への感謝の気持ちをプレーに込めて、ゴールという形でその思いに応えたいと思います。」
今季初得点は6月の新日石水島戦。試合を決定付けるヘディングでのゴールはスタンドを歓喜に包み込み、チームメイトからは手荒いほどの祝福を受けた。兒玉はそれに応えるように軽く右手を握り締めるとボールを拾い上げ、急いでセンターサークルへ向かった。
「もう一点」と。
「喜ぶのはまだ早い。僕らには辿り着かなきゃならない場所がありますから。」
どこまでも貪欲な兒玉の派手なガッツポーズ、
その時、その右手には「山口発JFL行」の切符が
強く握り締められているはずだ。
#29兒玉光史(こだま・みつふみ)
1985年10月2日生。
宮崎県出身。
162cm 65kg。
ポジション:FW
前所属:東亜大学
チームの起爆剤としてピッチを所狭しと駆け回る。「ゴールが全て」と言うように常にゴールを意識したプレーが身上。思い切りのいいプレーはチームだけではなくスタンドにも大きな勇気をもたらす。2日に24歳になったばかりの兒玉が自らを祝う「ミツゴール」でレノファを勝利へ導く。

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